初めての苦渋の決断・・・

施設には、どうしても出て行きたい人がいる。どうしてもお家に帰って、ご主人のご飯作らないといけない。主人はどうしてるだろうかと気になって気になって仕方ない。どうにかしてここを出て主人の待つ家に帰らないといけないんだ・・と強い気持ちで出口を探す。出口が開かないとなると、窓からでもベランダからでも飛び降りてでも帰りたい気持ちになる。だって主人が心配なんだから。ご飯もお風呂も、洗濯もそして今日あった出来事も話さないといけないのに。なぜ出口がない?
こんな方はいっぱいいた。「お先に失礼いたします」と言ってエレベーターに乗り山を越えコンビニで道を聞きたいけど住所を忘れて交番を聞いたり、赤信号で止まっている車に「乗せてください!家まで送って」とドアを開けようとしたり。わたしたちは一緒にずっと歩いて来た。お互いヘトヘトになって車で迎えに来てもらったりもした。今回の帰りたい!方はちょっと違って・・みんなに言わずに気付かれないようにそーっと内緒で帰りたいらしい。何故か?と言うと。ちゃんと理由があって「主人のご飯を作ったらまたすぐ戻るから」だそうだ。そして、夕方本当にいなくなった。いなくなったと気付くより、施設に向かっていた夜勤者が見つけて連れ帰る方が早かった。びっくりとホッ!とが一緒に来た。目と鼻の先にはいたけど施設の外に出ちゃったことは問題だから、エレベーターの扉が閉まるまで必ず確認してね、とかエレベーターを呼んで一階ボタンを押したかもしれないから、エレベーター会社にも方法はないか聞いたりもした。そうこうして対策している間に第二弾が起こった。一階で靴を履いているところをリキが見つけて事故にはならずに済んだ。が・・よかったでは済まない。二回も起こったらもうちゃんとした対策を考えないと絶対にあかん!!!でしょう。

こうなった・・・。不本意ですが・・もうこれしか思いつかない。こんな寒い中、薄着で外に出て暗くなって・・寂しいし怖いし、何といっても命にかかわる。外に出たいと言われれば一緒に行くけど‥こんなご時世‥コロナがまた爆発しちゃっているしあまり外にも出たくはない。ご家族の面会も中止したし‥とかいろいろ難儀な世の中だから‥なんて通じないよ。みんな忘れちゃうんだから。そして、何よりご主人の安否と、晩ごはん作ってあげなきゃならない気持ちが強すぎちゃって、どうしたって帰らなきゃならないんだから。何て言ってもどんな嘘ついてもどう説得しても「あーそうよね。じゃあやめとくわ」とはならない。一瞬なったとしても、次の瞬間又帰らなきゃ!ってなる。魔の夕暮れ時なのだ。主婦は、お母さんは、この時間みんなの帰りをご飯作って待つ、そういう歴史なんだ。そう簡単に忘れない家族の歴史だ。家族が揃う大事な時間だから。

牢屋みたいな柵を、エレベーター前に作った私は、かなり、かなりへこんでいる。そして、違う方法を模索中。安全第一!もちろんそう!!もちろんさ!その上でだ。こんなことしたくない。セキュリティなんかくそだ!人の力を信じている。私たちはそうやって来たはずだ・・なんてね。そんなきれいごと言ってられないんだ。「大脱走!」を阻止しなきゃ。まずは、ここにいるみんなの命!だからね。どんなに時間がたっても、どんなに優しい職員がいても、どんなにここが楽しい所でも、どんなに頑張ったって家に勝るものはない。家族に勝てやしない。いやいや‥はなから闘いは挑んでないんだけど、めいの家も別荘くらいにはなるといいな、とは思っているけど。ご主人のご飯、子供たちの心配はずっとずっと続いていくし、それが生活なんだもんね。入り口のドアをあけ放ち、窓を全開にして日々を暮らせるようになりたい。帰りたいっていえば一緒に帰ることができるような、どこへでも好きに行って、食べたいときに好きなもん買いに行って、大好きな人とお出掛けして疲れて爆睡できる日々を夢見てる。こんな格子のドア!!くそくらえ!!だよ。

初めての苦渋の決断・・・”へ6件のコメント

  1. 緒方 しのぶ より:

    さすがです!

    1. meino-ouchi より:

      本当に皆さんさすが!です。いつもいつも見事に裏切られます。どんなことも楽しい事になっていく・・この感じ大好きです!!

  2. 緒方 しのぶ より:

    宮崎さんの苦渋の決断、しっかり読ませていただきました。
    私たち外部評価の調査も、結果だけでなく、ホームでの取り組みの経緯や皆さんの思いを尊重する調査を大事にしなくてはと思いました。

    1. meino-ouchi より:

      ちょっと面白い事が起こっています。別の利用者さんなんですが、二階に行くととっても得意げにこのドアを開けてくれます。そうなんですよ!!鍵を開けることができるんです。そして開けられることをみんなに自慢します。最初に開けるのを見た時は、思わず拍手してしまいました。笑 私の悔しさとは関係なく、皆さんわりと楽しんでおられるんでびっくりです。扉の格子になっているところにお花やお人形を飾るとかわいいとか、赤に塗ったら遊郭だね、とか・・カラフルに塗ったら食べたくなるねなんて話しています。この扉を作った原因は置いといて‥作っちゃったんだから これをどう活用してどう楽しいものにするか きっとそれが職員の手腕!!教えられました。「開けて~」って言ったら飛んで来て開けてくれる役割も笑っちゃうけど素敵です。何でも遊びに、役割に、なるんだなぁってなんか感動です。閉じ込められたなんて誰も思ってない!!ってことが私の気持ちを楽にしてくれました。苦渋・・だったのに・・笑

      1. 中島圭子(オンブズマン機構) より:

        ハラハラドキドキ進展をのぞき見させて頂いておりました。
        人間って、日々を暮らすって素晴らしいですね。
        感動をわけて頂き、ありがとうございます。
        調査員の勉強会でこの事例を取り上げさせていただければ‥と緒方さんと相談しておりましたが、いよいよ輝きが増してきました。
        また、あらためてお願いをさせて頂きますが、その節はどうぞよろしくお願いいたします。
        毎々お願いばかりで申し訳ありません m(__)m

        1. meino-ouchi より:

          こんにちは。いつもどんなことも「なんとかなる」って「大丈夫」って思わせてくれる強さは入居されている皆さんに頂きます。情けない事が素敵な出来事になったり、悔しくて悲しい事が先につながる道になったり、いつもどんなことも何とかなってきた私には 強い味方が付いているのです。偶然うまくいったんじゃなくてこれは皆のおかげの必然ですよね。どんなことも楽しい事に変える力をいただいています。こんなお話でよければ、いつでも何でも使ってください。ものすごい勢いでコロナが流行っています。どうかお気をつけください。

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