嫌いにならない理由

ご主人から「好き好き大好き!」とラブレターを数えきれないほどもらい、断り続けてきた結婚も押し切られてしぶしぶ承諾した…きっとかわいい魅力的な娘さんだったんだろね。
そして二人は結婚したわけだけどね。彼女はカッとなりやすいお嬢さんで自分の思うようにいかなかったり、言うこと聞いてもらえなかったらちゃぶ台ひっくり返すような性格で、ご主人が入れてくれたお茶も 気に入らんかったらご主人めがけて投げるくらいの気ままさで‥。でも、それでもなんでも、ご主人は彼女を可愛がった。大好きだった。大切にした。
だから、超本気の我儘ばあさんが誕生しちゃった。

ドアを持ち上げ潰し、衣文かけをねじってバラバラにした挙句その棒で職員を叩いて追い掛け回す、職員を部屋に閉じ込め鍵をかける、お風呂から泡だらけのまま走って階段駆け下りすってんころりん、それを人のせいにして蹴り上げる。ボタンを止めるよと手を出すと噛みつく、引っ掻く、トイレのふたを引っ張って割る、壁紙剥がす、大声で騒ぐ、叫ぶ、泣く!声大きすぎて、お隣のマンションから「もう勘弁してくださいよぉ」って苦情来た。エレベーターのドアをたたき続けエレベーターは止まった‥。

これは武勇伝かな?とにかく寝ている時と食べているとき以外暴れていた。職員はみんな一度は血だらけになっていた。魔物だ。精神科に行ったけど、途中で車のドアを開けて飛び出そうとしたり、帰りのうどん屋で隣の人のうどん取って手づかみで食べたり、命がけの受診だった。先生はいっぱいお薬くれたけど「性格はね、お薬効かないから、ね。」ってね。でも月一、家族と私は命がけ受診と、帰りのうどん屋をやめなかった。

たぶん、彼女のことが嫌いじゃなかったから。私だけじゃない。職員みんな、苦笑いだけど困った人だけど痛いこといっぱいされてっけど、毎日てんやわんやの大騒ぎだけど、好きなんだと思う。理由はない。憎めない。話も通じないのに嫌いにはならん。

この彼女が亡くなった。フロアは静かになった。することのない時間ができた。おやつを作ったり買い物行ったり編み物したり笑いあったり、そしてふと寂しくなったり。

今、彼女の部屋でこれを書いている。静かで困る。

めいの家で暮らした証

私たちはもう20年近くずっと めいの家から送った方のお通夜には一緒に過ごした笑顔の写真を届ける。こうして最期まで笑っておられたんですよ、施設は辛い悲しい所じゃないよ、楽しいことだって、仲良しだっていっぱいいる いい人生だった!って思って送ってあげてほしいから。ここで笑って ここでお腹いっぱい食べて ここで仲良くなって ここで大好きになって ここで抱き合ったことをちゃんと伝えたいからね。

ありがとうね。さようなら。合掌

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