心ガ覚エテル

10年前は、入居者の息子と施設管理者と言う関係だった。
入居している母が亡くなってお住まいだったお部屋でお別れの会をした。「施設長」と呼ばれていた。「あさおさん」と呼んでいた。男の子職員を引き連れて山に登って飲みに行って、めいの家と地域を結ぶ懸け橋となり走り回ってくれた。めいの家で終末期の研修会をして地域に呼び掛けたりね。めいの家を深く愛してくれたご家族の一人だ。感謝している。

今年80歳の彼は認知症になった。冷房と暖房のボタンを間違えて熱中症にもなった。山好きが階段上がれなくなった。できないことや覚えられないことが増えて自暴自棄になり拗ねるしすぐ怒るようになった。「くそっ‼‼‼」って思ってるのは私も一緒さ。

で、彼は私を「お前」と呼ぶようになり。わたしは「あさお」と呼ぶようになった。距離は10年前どころじゃない。縮みに縮んだ。「ほっといてくれ、お前に関係ないやろ!」と大きめの声で怒り、「えらそうやな、一人で立てるようになってからやな、あさおがえらそうに言っていいのは立てるようになってからや!な。がんばれって!また一緒に焼酎飲もうや。あさおー!」「お前、泣かすなや。」という三文芝居みたいなやり取りと言い合いが心地よく楽しい。心の奥底に、彼は私を覚えてる。「あ、えらいさん来た!」って皮肉に笑う。昔の関係を、私を心のどこかが馴染んでる‥認知症侮ってはいけない。

だから、心地いいんだろうね。立ち位置が変わっても年月が過ぎても、関係は変わらない。なんなら今の方がいろんなもん取っ払ってなかいい。毎日、「デートしよ」って「デートなんだからちゃんと腕持ってよ」ってお互いにやけながら あさおの大っ嫌いな散歩する。

仲良くやっていこうね、心が覚えてくれてることホントにうれしいよ。

8月の初めに10年近くぶりに出会って今日まで、縮みに縮んだ私たちの関係のご報告でした。

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