心ガ憶エテル ending story
9月17日、あさおと私の関係を書いた。まだまだ、まだまだこの小憎たらしい関係は続くんだろうと思っていた。
どんどん痩せていても、盛り返すと‥なんとなく信じていた。
けど…11月23日あさおは眠ったまま目覚めなかった。
その4日前、目の前が二重に見えるとかフラフラするとかいっぱい言うからもしかして脳卒中か?って疑って救急車を呼んだ。
脳じゃなかった‥けど、悪いとこいっぱい見つかっちゃって。栄養は行き届いてないし、脱水だし腹水や胸水いっぱい溜まっていて、肝臓の数値はびっくりするものだったそうだ。妹さんは「絶対に病院で死にたくない。めいに帰って死にたい。」と言われ病院の対応と家族の気持ちが掛け合わずに後手後手になってしまったように見えた。治療せずあさおは帰って来た。そう決めた兄妹の力になるしかないじゃない。迎えに行ったらニヤッと笑って「来たんか。」と言った。あんなに瘦せてたのに、さらに輪をかけて痩せちゃって‥人ってどこまで痩せるんだろ?!って手を握った。そしたらね、「何すんねん、気持ち悪いなぁ」って怒って見せてね、あーもうしばらく この人に生きてほしい‥って思ってね。車に乗った。車いすのまま後部座席に乗ったあさおは横に体育座りした私の頭をぽんぽんと叩いた。「どしたん?」って振り返ると「ありがとうな。世話んなったな。ありがとうございました。」と頭を下げるあさおがいた。助手席の妹さんが「めいの家に帰るんやからお世話になるのは今からよ。きみちゃん(めいで亡くなった兄妹の母の名)はまだこっち来んなって言うてるわ。」と笑った。私も笑ったけど…この人は自分の死期を知ってるんやなって思った。そう長くはないこれからを楽しんでいこうと言葉は全部飲み込んで「逝くときは教えてや」って頭をぽんぽんしといた。二日後の青空ホットスナック祭りにも参加して、あれ食べろこれ食べろとみんなに言われ続け、いつ見てもあさおのお皿は山盛りホットスナックで溢れてた。「もう食べられへん!もういらん」って言いながらあさおは笑って日差しも避けず楽しんでいた。次の日は体操なんか一生懸命しちゃって「いたたたた…」ってね、弱虫あさお!全開だった‥次の日。朝から座ることもできず食べることも飲むこともできず「張り切りすぎちゃったかね」なんてみんなに言われずっとずっと ずっとずっと寝てた。ずっと寝て夕方そのまま逝った。もしかしたらあさお自身も「あれ?俺死んだの?」って思ってるくらいに穏やかで波の音もしない最期だった。あさおはもう逝くよって教えてはくれなかった。私は、というと「もうそろそろ覚悟かもよって夜勤者に伝えてほしい」と言っている。だから逝くよって教えてくれてたんかもしれん・・ね。
ちょっとシャイに、触っていいかあかんかみたいな気遣いの頭ぽんぽん がまだ感覚残ってる。
最後はめいの家に行きたいって言ってくれてありがとう。最期をここで迎えてくれてありがとう。めいの家を愛してくれてありがとう。
あさお、またね。
15年くらい前のあさおと私。遺影にもしてくださったこの写真、一番あさおらしい。シャイなおしゃれおやじ。