だいじょうぶ!!晴れる!!蒔野壮修

七月のある日、大阪の新型コロナウイルス感染者が100人を超えた。二か月ほど中止していた面会をやっと再開し、利用者は家族に会えた。ほっとしたのもつかの間。 またまた東京も大阪も世界もコロナの悪夢と戦うことになった。
私は職員に不要な外出外食、飲みに行くことも子供と遊びに行くことも旅行も自粛するように言った。これが、この仕事の宿命で、私たちの覚悟でもある。利用者に絶対にうつしてはいけない、そのためにできることは全部する。世間がGO TO!!と言っていても私たちはどこにも行ってはいけない。私たちはそういう仕事をしている。

感染者100人を超えたつぎの日。
蒔野はお休みだった。朝っぱらから電話してきて
「社長、今めいの家にいます?」
「うん、どした?」
「今から行っていいっすか?」
「いいけど電話で済まんの?」
「いや!いやいや!行きます」
10分ほどして汗だくの蒔野が飛び込んできた。

この男、ちょっと変わっている。
根拠のない自信がある。
夏祭りも運動会も春祭りも・・だーいじょうぶ!!晴れますっ!!とガハガハ笑いながら言い切る。
蒔野が晴れると言い切るとちょっとそんな気がして安心したりする。
俺、持ってる男なんで、と言うがなにを持ってるのか何を根拠に言ってるのか全く分からない。
毎日同じテンションで毎日元気はつらつで悩んでいたり悲しんでいたり思い詰めたような奴を一度たりとも見たことはない。
ずっと変わらず同じ状態で職場にいることは簡単な事ではないと思う。
同じでいるつもりでも、今日はどうしたんですか?しんどいんですか?機嫌悪いでしょ、なんて私はいっつも言われている。瞬間で湯が沸く性格はなかなか隠せない。
毎日同じでいる事の凄さ!真似したいよ。

その蒔野が、真面目な顔でこう語る。
「コロナの自粛で職場と家、僕も嫁さんも用のない外出はしていません。次男も公園に行くくらいで距離を取るよう話し続けています。気になって仕方ないのは長男です。バスと電車を乗り継いで学校に行き、帰りに友達とラーメン食べたとか千里中央で遊んだりだとか。感染防止について言ってはいるんですが高校生にはなかなか危機感が自分たちほどありません。」
そして
「コロナのワクチンが出来て安心できる世の中になるまで例えば倉庫番とか人に会わないバイトで食いつないで社長が、もう大丈夫やでぇ 蒔野戻ってこいって言うまで休もうかと思って相談に来た」と。
真面目な顔して語る蒔野には申し訳ないが、笑ってしまった。
持ってる男は不安でいっぱいだったんだ。
緊急事態宣言明けてからお店や学校が再開し、いつまでもどこまでも どこにも行くな、なんて言えない。
新しい生活様式を守り、暮らしていく中でコロナに感染しても誰も長男を責めたりしない。蒔野を責めたりしない・・と話した。
いつもの笑顔に戻った蒔野は、
「良かったぁ!!!!!」って両手を挙げた。
医療関係 福祉関係の家族もまた大変だよ。
連休があっても旅行も許されず、ちょっとお茶・・さえ諦めて我慢の生活が半年を超えた。
先の見えない、いつかいつか・・の未来は希望を見出すのにチカラがいる。
それでも、めいの家に関わる全ての方を守らなくてはならない、使命感。
蒔野の決意は心に響いた。
能天気な男だけど、かっこよかった!
だーいじょうぶ!!晴れるよ!なっ!!

もうちょっと、もうちょっと みんなでがんばろう!!!