最高齢職員89歳 調理師:野田忠弘
出会いは15年前。開所したばかりのめいの家にハローワークから電話がかかって来た。
70歳を超えて、持病を持つ妻を支えながら週に三回病院に送り迎えし、家事を一手に引き受けながら働いていた。中央市場に買い出しにも行ってくれて、月に一度は皆の前で寿司を握り、季節ごとの旬の食材を生かして楽しませてくれる。
初めて勤務した日に、何も入っていないおだしの味だけのお吸い物を出してくれた。まぁなんと!美味しかったぁ!!これから毎日このお料理が食べられる、と思っただけでワクワクした。職人、野田さんは頑固者で、お魚も自分でさばかなきゃ嫌だし、てんぷらの材料も自分で決める。炭熾してサンマ焼くしカツオのたたきも作っちゃう。固くて食べられないとか、お金がかかりすぎるとか煙が近所迷惑だとか・・思ってくれない。とにかく美味しいものを作りたい。皆に喜んでほしい。文句言いに厨房に行くと聞こえないふりをする。遠くを見て絶対に目を合わせてくれない。知らないうちに帰ってしまう。
経営的には本当に厄介な調理師だが、野田さんのお陰でめいの家はご飯がものすごく美味しいところって言われるようになった。お寿司を握ってくれる施設はそうないし、フグ料理やクエ鍋、蟹すき、サンマの炭火焼き、鯛のあら焚きや船盛り・・と次々お金のかかる提案をしてくれて笑 みんなを喜ばせ続けてくれた15年。
野田さんがいたから、うちの厨房は今も褒められる。
ここ三年ぐらい、野田さんはグループホームや有料施設に呼ばれてお寿司を握りに行く。
皆さん喜んでくださるようでとっても嬉しそうに行ってくれる。めいの家の記念式典は絶対に野田さんの握り寿司と茶碗蒸しで、年末には必ず30日に60人分のおでんを作る。火の用心の夜回りに吹田市長さんたちが来られるので毎年もうかれこれ10年くらいもっとかなぁ、野田さんは毎年ぶつぶつぶつぶつ言いながら大きな寸胴二つ分のおでんを炊く。
地域にも貢献し、ここに住まう皆さんと通ってこられる皆さんと、職員たちのために89歳は今日も奮闘している。
奥様が亡くなってどうなるかと思ったら、いつもと変わらずいてくれてほっとして、80歳を超えての車通勤はもうやめようと話した時もすんなり車売っちゃって、電車とバスを乗り継ぐからと新しいスニーカーとリュックを買ったんだと嬉しそうに見せてくれた。
これですよ!!これ!野田さんの元気の素はこの順応性。切り替えが早い!!
お料理には頑固さが際立っているけど、どんなことも楽しくできて明日を見ている。
野田さんは来年90歳になる。でも・・
まだ一度も辞めると言ったことはない。
まだ一度もへこたれたことはない。
悔いを残さない野田さんの生き方が 羨ましくもあり尊敬です。
貫いてくださいよぉ~その頑固!!!
野田さん、今日のお昼ご飯 何?