ゆるふわ めんどくさいイケメンのお話

初めて会ったのは・・もう10年くらい前。野村が介護福祉士筆記試験に合格し、実技試験に挑む頃。
私は20年くらい前から介護福祉士実技試験やらヘルパー2級の実技部門やら、若い子たちにお教えしていたことがあって、めいの子たちもどうか受かってくださいって仕事終わってから実技指導してたのね、そしたら佐竹さんとこの施設の子が受けるからって一緒に教えてって来たのね。その子が野村泰彦。まだ20代だったんじゃないか?優しくて、背も高くてかっこよくて、気の付き方も半端なくて、素敵な好青年でした。とにかくいい子なのでめいの子たちと一緒に一生懸命教えまして。
その後は、飲み会に佐竹さんと一緒に来たり、「わたしにできることプロジェクト」の第一回目にご一緒したりして知り合っていった。そのうちに「わたしにできることプロジェクト」の話はさせてね。

                で、そのうちに彼は結婚して、「絵」にかいたようなかわいい家庭を築くのだろうと想像していた。人にやさしく気遣いの彼はどんなに奥様を想って生活するんだろってワクワクした。束の間、ワクワクしたんだけど・・ものすごいスピードで離婚しちゃったんだ。どっちがどうだかも知らんし、離婚の理由なんて一つじゃないし、積み重ねた負の感情が音を立て出した時に超えるか切るか、それぞれだしね。その時にね忘れられない野村の離婚理由があって。「彼女はお布団に入ったらすぐに寝たい。僕は本読んだりぐずぐずしながら寝る前時間楽しみたい」歩み寄れん生活の大切時間ってあるよね。なんか納得しちゃった。「そんなことぐらい・・」なんだけど「そんなことぐらい」が重なり続けると生きている意味も分からんくなるほどの大事に発展することだってあるしね。全然違う人生を生きてきた人と一緒に生活することは並大抵のことではないし、自分一人じゃ思い付かないような楽しい事もいい事もいっぱいあるだろうけど、その人が一緒にいるせいで嫌な事もてんこ盛りになったりする。心優しい彼が人と永遠の別れを切り出せるのかってものすごい興味あるっ!!でも別れたからな・・。グループホームも同じだなあって思って。いろんな人が一緒に生活してるけど、すぐ寝たい人も起きてごそごそしたい人もいるし、起きたらすぐご飯食べたい人や、お布団の中にくるまっていたい人や・・いろんなその人らしさを優先に考えないといけないなぁって改めて思った。その後 急に学校に行くって言いだして佐竹さんのところを辞めて、彼は作業療法士になり病院で働いたり、診療所やら友人と働いたり、傍から見ているともうちょっとシャキッと働きなさいよ!!って思うくらい自由に働きたいときだけ働いている。でも心を開かない質らしく常に静かに腹が立っているらしいわ。会うたびにめんどくさい奴だなぁって思い、話すたびに腹が立って、ふにゃふにゃしてる40歳にイライラするけど。本当は誰よりも自分の人生を大切にしているのではないかと 思う。なんて言われたってやりたい事をフワフワとやり通す感じ、私みたいに大声出して喧嘩したりはしないけど私よりずっと静かにゆるく自分に向かっているとうらやましくなる。

働き方も変わり、私の時代とは頑張り方も違うけど、それぞれがそれぞれを理解していいとこいっぱい探ってお互いを大切に生きる仕事を繋いでいきたい。彼を見ていて、どんな生き方もどんな頑張り方もどんな幸せも、一緒にいる人の理解があれば 一緒に楽しめるんだ。と教えられた。職員同士も友達同士も家族も利用者さんも、人のつながりは変わらないもんね。相手を大切に気遣う気持ち!!持ち続けて私の未来に向かいたい。         野村は、ゆるいあんたのままで十分素敵よ!!

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