苦渋の決断・・第二章

木製鉄格子でへこみまくっている私がエレベーターで上がっていくと・・木製ドアが開いている。??????なんで?あんなに皆に言ったのに、頼むからドア閉めてよ!頼むから気にしてよ!何やってんだ!この野郎!!誰だーー!!!って鬼の形相で鼻の穴広げてエレベーターを降りた。すごい顔してたと思う。怒ってたと思う。頭に血が上ってたと思う。何から言えばいいか分からんくらい腹が立っていた。
リビングのトイレのドアが開きリキが顔を出した。殴りかかるくらいの勢いで私は突進した・・リキが「川さんが開ける」「川さん開けられる」と困った顔で言った。え?え?えぇー!!!開けるって?どういうこと?
早速、川さんを呼んでお願いしてみた。なんか私ワクワクしてるんだけど‥笑
「お願い、ドア開けて」と言うと、ものすごい速さで来てくれてものすごい笑顔で、ちょっと照れながらドアの向こうに手を入れ引っ張ったらすぐ開いた。あっけにとられるくらいにすぐ開けた!!


びっくりしちゃって・・拍手しちゃった。すごく上手に開けるんだもん。そしてそしてものすごく自慢げに嬉しそうに笑ってるんだもん。何回でも開けてくれる。そして閉めてくれる。誰かが来るたび、ホテルのベルボーイさん並みによく気が付き すっ飛んで来てどうぞ~って開けてくれる。楽しそうすぎて・・一緒に笑っちゃう。そしてそして・・その格子のドアをみんなで眺めて相談するのよね。「あの格子、赤く塗ったら昔の遊郭みたいね、時代劇に出てくるわ」「怖いわ赤なんか。缶に入った飴みたいにいろんな色で塗ったらどう?食べたくなるわ」「やっぱり木のままがいいわ。木の匂いがいいやないの」「お人形持ってきて置いたらかわいいかな」「ドア動かしたら落ちるやないの」「植木置いて、葉を絡ませたら」「ジャングルやね」「うちの家あんな格子の引き戸やったわ」・・・と話ははずみ、なんか楽しそうで・・私のへこんだ鉄格子のドアが話題になっている。しかも楽しい話に取り上げてもらってる。

器用だねぇ!!

なんだって楽しい事にできる皆は本当に素敵だ。閉じ込めてんだよ、私は皆をここから出られなくしてるんだよ。・・・と悲しい気持ちは、皆が変えてくれた。職員も笑ってた。「川さん、やるやん!すごいやん!!」「どうやって開けんの?教えてー!」なんてほめてる職員もいた。確かに!!めちゃくちゃ褒めたくなる。ダメかもだけど‥この格子ドア、いろんなこと教えてくれた。どんな嫌な事も辛い事も悲しい事も、一人じゃなければ いつだって楽しい嬉しい幸せな事に転換できる力があるってね。この苦渋の決断は、教えてくれた。

こんなに困って苦しんだ決断が・・みんなの笑顔を引き寄せた。これは偶然の結果じゃない。ここにいるみんなの、全員の信じる力だよね。どんな時も一緒にいよう。こうして笑っていよう。

私の苦渋の気持を救ってくれて・・感謝。