長い間。
2016年3月、ニコニコ笑って、やって来た大阪のおばちゃんは妹やご主人が大好きで、息子さんや娘さん、お嫁さんにも愛された人だ。気の強いおばちゃんは口より先に足が出る。すぐ蹴飛ばそうとする。「おぼえとけよ、こらお前!」とか言う。でも、握っているベタベタのチョコレートを口に入れてくれたりする。ニコニコ笑いながら「内緒やで、はよ飲み込み!はよぉ。」とぬるーい溶けて形のないべちゃべちゃのチョコを、ね。
毎月一回ご主人の月命日に息子さんが迎えに来られお家に帰っていた。歩いて帰っていたのが車いすになり、お寿司食べていたのがプリンやゼリー、おうどんやおじやになった。いつの頃からかベットから抱えて車いすに座ってもらうようになり、だんだんお話もしなくなり、蹴とばしてもくれなくなった。かんたを膝の上にのせて撫でて叩いて、いろんなもん食べさせていたから、彼女が動けんくなってもかんたはベッドで一緒に寝ていた。コテツは動けない彼女しか知らんけど、同じようにベッドに入りお口を舐めたり潜り込んでお腹の上に顔を置いて寝ていたりする。美味しい味がするの?彼女が優しい人だと知ってるの?口は悪いけど頭を撫でてくれる彼女を知っているように見える。
とっても優しい風景なんだよね。 長い間一緒にいて、老いていく彼女と一緒にいて、いつか見送る時が来て、思い出になっていくんだ。
私たちが一緒にいたのは、彼女の人生の最後のほんの一章だけで、どんな子供時代だったかも、キラキラの青春時代も、どんなお母さんだったかも、ご家族のお話からしか知らない。
それでも、彼女の人生の最後にここで会えて「ここに来てよかったぁ」「あんたに会えてよかったぁ」って思ってもらえてることを信じてね。彼女が最後の一息つくまで「いつも通り」の毎日を一緒にいようと思う。
長い間、一緒にいてくれて嬉しいよ。ありがとうね。