帰宅願望

夕暮れ症候群‥というものをご存じだろか?
主に認知症の高齢者に多い現象でね、一般的には夕方から夜にかけて不安や混乱、興奮状態、そして「お家に帰らなきゃ!」の気持ちがマシマシになる時間帯。

人はね、元々日の出とともに覚醒して、日没とともに眠るって言う生態リズムが昔々からある、そして、お母さんは夕方になると旦那さんや子供たちが帰ってくるから「帰らなきゃ!」ってなるし、お父さんは早くお家に「帰らなきゃ!」ってなるんだよね。だからみんな夕方は心が早る。「こんなとこで遊んでる場合じゃないのよ、私のこと家族が待ってるのよ。晩ごはん用意しなきゃ、お風呂沸かさなきゃ。お父さん帰って来這ったら怒られるわ。」…となる。帰らんでいい、なんて言われても そりゃあもう余計にどうしていいかわからん。帰らんでいい?泊って行け?なんなら毎日泊まってるやん‥なんて言われたら頭がおかしくなる。どうにか出口を探して帰らなあかん。ここの奴らじゃ話にならんわ、と徘徊や暴言、暴力が始まるわけで。決して誰も悪くない。しいていえば、不安にさせた職員が悪い。求められる答えを用意できなかった職員が不安を煽ったのだから。

いつも書くけど、帰りたい気持ちはなくならん。ずっと帰りたいし、ずっと家がいい。一番いい。「ここもまぁ良い」「今日はここにいても良いかな」くらいの感じに落ち着いたら上出来だ。明日は明日の不安があるし、明日は不安なく過ごせる日かもしれん。とにかく今日とは違うから。

『帰宅願望』は私であることを覚えている証拠なんだよ。私の家に帰りたい、私の家族が待っている。そこにはきっと私の家族の笑顔が見えている。私を待っている家族がいるのだから。ご主人の顔も子供たちの名前も忘れちゃってもね、帰りたい気持ちはそのまま残っている。我が家とはかけがえないものだと心の芯から思う。

だから、私たちは今日も夕暮れの不安と付き合う。ここにいていい理由をいっぱい用意する。ここにいてほしい理由、かな。これはある意味闘いだし、究極の我慢大会だ。何をもってその方が落ち着くのか、何を言えば納得できるのか探る時間は長い、んだよ。でもちょっとでもめんどくさい感やほかのことに気を取られてる感じ出したらもう信じてはくれない。しっかり眼を見て、本気の勝負に挑む。今日の、今この時を心安らいで過ごせるかどうか‥本気で願い挑む。‥…でも、大体の場合 夕食が全てを解決してくれる。お腹がいっぱいになるって人生変えるくらいの大事さだよ。笑

夕暮れ症候群…暮らしの中の大切な家族の時間を持ってる人に起こること。それぞれの素敵な人生を想いつつ、今日も夕暮れに付き合う。

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