おとっつぁん
おとっつぁんが帰ってくる。
おとっつぁんとこ行かなあかん。
一日中‥おとっつぁん‥おとっつぁん‥。
これはご主人のこと?お父さんのこと?
本人に聞いてもさてさてわからん‥・。
ご主人に聞いてみると「家ではそんな呼び方されたことないですよ。そんな下品な物の言い方する子じゃない。わたしはパパと呼ばれてましたから。」と言うが‥じゃあ どこから出て来た!おとっつぁん‥。
とにかくおとっつぁんに押しつぶされるくらい日々はおとっつぁんで始まりおとっつぁんで終わる。早口言葉みたい。笑
主婦として生きてきた人の多くは、夕方になるとソワソワする。「夕方症候群」子供が帰ってくる、主人が帰ってくる、ご飯の用意しなくちゃ、お風呂沸かして出迎えないと!…というソワソワ、そして帰宅願望。時には職員を振り切って逃走の如く逃げ回って走って出ていく人もいる。それくらい帰らないといけない気持ちにさせる。お母さんの、妻の気持ち。長年、仕事や学校から帰ってくる家族を迎えた主婦の気持ち。
おとっつぁん‥といい続ける彼女にもそういう家族の歴史があるのかもしれん。年取ってから出会った私らには計り知れん もう自身が思い出せない彼女の過去。
今日私は「おとっつぁんを迎えに行かなあかん」と眉間に大きな皴を寄せて言って回る彼女に「会いたかったら迎えに来るわよ。あなたが迎えに行かなくても大丈夫!大人なんだから。ほっときなさい。そして私とゆっくりコーヒー飲もうよ。」と言うと 眉間の皴がスッと消えた。これが毎日通用するなんて思ってない。でも今日は彼女は笑った。笑いながらコーヒーを飲んだ。
おとっつぁんの呪縛から解いてあげたいけど、長い彼女の人生を知らずできる事じゃない。私にできること?せめて今日、今の不安を取って一緒にコーヒーを飲むくらい。私らにできることはそれくらい。


