まぼろしの「ぴいたこ」から 宮﨑いずみ

かんたがめいの家に来た冬のことです。まだ小さなやんちゃなかんたと駐車場で遊んでいるとボールがコロコロと門から転がってきて小学生の男の子が駆け寄ってきました。

遠くから「そこ入ったらダメ!!怖い人が出てくるよ!帰ってきなさいっ!!ボールくらい買ってあげるからっ早くこっち来なさい」叫んでいるのはお母さんらしき人。男の子は私に「ほんま?ほんまにゾンビいるん?」と聞きながら走っていきました。ゾンビ?ゾンビですか?この館はご近所にそう言われているのか・・怖っ!
そうなのかぁ、愕然としつつもちょっと笑ってしまい、このゾンビの館のイメージを変えるべく思いついたのが、駐車場で始めるたこ焼き屋さんでした。
中からじいちゃんばあちゃんが買いに来る、子供たちが買いに来る、たこ焼き屋の前で出会い、何度も会い、あれ?ゾンビじゃないやんっていう筋書き。

「ねぇちょっとの間でいいからさ、たこ焼き屋さんやってくれないかなぁ」手を合わせた相手は、私の長女ぴいでした。
また、この子が親に似ず何でもそつなくこなし、言いたい事言いたい放題言う割にはあまり人に嫌われないという特性を持っている。しかも料理がものすごくうまい。
しかも段取りがものすごくいい。いろんな問題を簡単に解決してしまう天才でもある。
気遣いの天才と私は呼んでいる。愛想は無いが心配りは私が知る人類の中で世界一だ。
ただなぁ・・、嫌いな人に嫌いと言う。嫌だと思うことは決してしない。
納得できない事は絶対に折れない。「表向き」なんてない。
あっさり叩き切ってしまう。見ているこっちがひやひやドキドキして心臓が止まりそうになる時がある・・おおげさじゃない!ほんとに爆弾!

とりあえず、押し切って騙して「ぴいたこ」は開店した。
思っていた通り美味しいたこ焼きは大評判になった。
ご近所の情報はぴいたこが一番よく知っていた。
あそこの子風邪ひいてるとか、おばあちゃんが引っ越してきたとか、ぴいたこは
ご近所に親しまれていった。
三年間の幻のぴいたこ。食べたいなぁって今も言われる。
ぴいたこはグループホームの介護士になり、そのセンスの良さから管理者となった。
と言いたいところだが、
実は、娘は騙されたと思っている。
間違っていない。大いに騙した。
ちょっと手伝ってーから始まって夜勤してみる?ー職員が揃うまで頼む・・などと
言いつづけて10年を越えた。
今は私よりもめいの家に必要な人で、職員からの信頼度も私とは雲泥の差だ。
悔しいけど、本当です。
歌って踊って楽しい事をめんどくさがらずに出来る天才。
ぴいちゃん、これからも騙され続けてください。

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