十七話 みんなが憧れる死に方

ついこの間、7月11日に93歳のおばあが亡くなった。
前の日、朝も普通に起きてきていつも通りパンとコーヒー、ヨーグルト。食べた後はうたた寝。両手で頭搔きながらゆらゆら寝ていた。これ、いつものこと。
お昼は厨房さんの手作りコロッケ2個ペロリ。お野菜も食べてまたうたた寝。これもいつものこと。「ねぇ、おばあ」って声かけるとしわくちゃの顔で「大丈夫大丈夫」って手を握り払うしぐさをする。どれもこれもいつものこと。
夕食は、カレイの煮つけを上手にお箸で食べていた。そして、いつものようにパジャマに着替え手伝った職員に手を合わせ「ありがと」と笑い就寝。叫んで暴れて警察や消防署呼べ~って日もありゃ殺せーって大声出す日も少なくないし、トイレばっかりでよく眠れない日もあるし身動きせず眠る夜もある。おばあの夜は「その日の賭け」だから。どれもこれもいつものこと・・。

(この写真は7月3日七夕のお祭りにて)

朝方5時ごろまで大いびきをかいて寝ていたらしい。これもいつものこと。                           めいの家の朝は自由で何時に起きてもいい。起床時間とかなくて、好きに起きてきていい。好きに寝てていい。
私は、歳を取ってもう仕事もしてなくて毎日が自由時間のファンキーばばぁになった時、「朝ですよー起きてください」とか「もうそろそろテレビ消しますよ、寝てください」とか「靴下はいてください」とかいろいろごちゃごちゃ言われたくない。言われたくない大事な一つが朝起きるまでほっといて欲しいの・・です。めいの朝は起こさない朝。あ~あんまり毎日昼前まで寝てたら片付かないからご飯食べてからまた寝てって言われるかもね。そんな感じなので、夜勤のぴいはおばあを起こす気なんかまったくなかった・・けどお顔を見に言って驚いた!!なんとおばあがたまごみたいにつるんつるんのお顔で寝てるじゃないか!・・おばあは実は朝とってもブスで・・しわくちゃの上に眠くて目が一段とちっちゃいはずがあまりにきれいなお顔だったので気になってお布団の中に手を入れた。声を掛けた。反応もなく脈も取れない。そこで電話をくれた。「おばあ息してない、と思うねん」「え!!おばあ?」「うん、おばあ」って感じの単語ばかりの電話でね。
走った!!バイク全速力でおばあの下へ。ご家族に電話して、医師、看護師、そして職員全員に一斉LINE。きれいなつるんとした全く皴の消えたお顔のおばあの顔を覗き込む、かすかに胸が息をしている様に動いた‥かに見えてお布団をめくったらいつものように右足曲げて手をお腹に乗せてちょっと横向いて・・いつものこと。
こんな幸せな死に方・・夜、おやすみって眠って次の日の朝、そのまま目覚めない。
こんな幸せな死に方・・眠ったまま、あれ?私死んじゃったの?
こんな幸せな死に方・・願ってもできるもんじゃない。                                    おばあは、あっけにとられている周りの皆を笑っているように見えるし、あら?みんなどうしたの?わたしどうしたんだろって現状を理解できてないようにも思う。どっちにしてもこれがピンピンコロリって感じかな。来られた娘さんとお孫さんは玄関で靴を脱ぎながら「こんな幸せな事・・ホントに幸せな人。皆さんにはご迷惑かけましたけどホント幸せな・・」と言ってくださって私は胸のつっかえがキレイに取れた。死に目に会ってもらえなくてなんかくすぶってたけどこの言葉に救われた。よかった、本当に憧れの死に方だったんだって思えた。

そして今日、娘さんとお孫さんがご挨拶に来てくださった。本当に幸せな最期をありがとう・・と言ってくださった。          この最期は私たちが導いたものじゃない。何をしたわけでもない。願っても祈っても出来る事じゃない奇跡だ。           幸せな・・と思ってくださるご家族に舞い降りた奇跡だから。

全ての方の最期が、穏やかで優しさに満ちた時でありますように。

おばあに合掌。

おばあ またね。

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