認知症って‥?ノンフィクション編

ある日、絹代さんの履物が無くなっていた。片方だけ‥ん?野良猫でも入って来たんかしら?それとも、もう数年話もろくにしていない主人が隠したのか、意地の悪い事で。
あれ?お財布がないわ。どうしましょう‥。最近あれこれ物が無くなるのは主人の嫌がらせに決まってるのよ。いいおじさんが、吐き気がするわ。男のくせに気持ち悪いわね。と妹に話していた。夕食準備、といっても自分の分しか作らない。ご主人の食事はもうかれこれ10年は作っていない。洗濯も掃除も自分の事しかしない。家庭内別居夫婦だ。ご主人も自分の事しかしない。どうしても言わないといけない事がある時は机の上にメモしておく。言葉は交わさない。さあ、夕食と思って冷蔵庫を開けた。そこに片方無くなった履物が入っていた。鈴の付いたお財布と一緒に。あの人はなんてことするんでしょ!!履物を冷蔵庫に入れるなんて‼‼でも、どう考えてもご主人ではない。出張で3日間不在、なくなったのは昨日‥。次の日は、お針箱がなくなった。次の日はまたお財布がなくなり、その次の日は洗濯機の使い方が分からなくなった。「お家に帰れないでベンチに座ってられるとこ声かけました。」とお隣さんから妹さんに連絡があった。絹代さんは「お散歩よ。」と笑い飛ばした。そして、自ら受診し【アルツハイマー型認知症】と診断された。勇気があります、絹代さん。さぞ、一人で心細かったことでしょう。子供もいなくて、妹は遠くで、ご主人とは長いこと話してもない。辛かったでしょう。

診断された夜、絹代さんは 玄関でご主人の帰りを待った。ご主人はこの日 十数年ぶりに「妻の顔を正面から見ました」とおっしゃった。絹代さんは帰ってこられたご主人に「私を助けてください。認知症になりました。あなたのこともじきにわからなくなりますが、親せきやご近所の方々に私がご迷惑をかけないように、私を助けてください。あなた様しか頼る宛てがございません。お願いします。私を助けてください。」と頭を下げたそうだ。

ご主人58歳、絹代さん53歳のちょうど今くらいの季節です。ご主人は十数年前に何があったかなんて忘れました、と言われ そして確かな事は、自分しかいないという事。自分に頼ってくれた気持ちが伝わったと、これから先の人生を共に手を繋いで過ごしていこうと早期退職され、訪問介護の資格も取られた。家を売って老後の資金を作り 二人は施設に入った。今、絹代さんはご主人をお父ちゃんだと思っていてご主人の膝の上に座っている。もう家事全般できなくなってしまったけれど「どこへ行く時も。寝床に行く時もトイレに行く時も食事もね、わたしじゃないと駄目なようで。困ったもんです」と言いながら照れたように笑っているご主人は、新婚さんみたいだ。もつれた糸をほぐして、編みなおしたのは認知症が運んできた勇気だよね。

認知症になって良かったなんて思わないよ、でも、でも いいことだってないわけじゃない。辛い事いっぱい、もう覚えてんのしんどいし!忘れちゃったほうが気楽に生きれるって、ね。だから歳を取るとちょっとくらい忘れっぽいくらいでちょうどいい幸せ具合になるんよ、きっと。だ・か・ら、若い皆様。何回言わせるんだよって思っても、又同じ事言ってるってため息でも、ちょっとしつこいくらいでも、お許しくださいね。老体!精一杯頑張ってるつもりっす‼‼‼

物忘れ酷くて、年取るの嫌だわっていうお年寄りに「なんでもかんでも全部覚えてたらかわいくない。ちょっとぼーっとして忘れっぽいぐらいがかわいいのよ!かわいいでしょ、私!」って私は言い続けます♡ずーっと、ずーっと♡

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