バウのこと。

だいぶ前に書いたヴィラコティ岸辺というグループホームの管理者 佐竹尚子さんとはもう十年以上仲良くさせていただき、コロナ中も何度かこっそり飲んだりした。酒強し!豪快な姉御肌。素敵な人だ。
悪口も言わず、声を荒げることもない。自分のことを喋りまくることも自慢することもなく 下ネタや楽しい話でみんなを元気にする人だ。

でも、今日の主役は佐竹さんじゃない。佐竹さんちのバウくんだ。

 十数年前に佐竹さんが保護犬施設のバウ君の写真に一目ぼれして家族になった。私はたった一度、佐竹さんをおうちまで送って行ってバウくんに会った。玄関先までゆっくり出てきてくれて好きなだけ触らせてくれた。ふわふわもこもこの中型犬だ。佐竹さんは夜勤もするので不定期な仕事時間で、お散歩も無理せず行けるときは行く、みたいな「義務」みたいにならない ゆる家族の関係が佐竹さんらしくもありバウくんの穏やかさとぴったんこに見えた。それを聞いたときに、なんかストンと腑に落ちて。無理せんでいいんやね、できることをできるときに一緒にやったらいいんやと気が楽になった。犬を飼う・・というなんか使命みたいなものを感じていたから。なんていうか、人間の6倍速で生きるわんこは10年から15年でその生を終える。だから、なんか必死にならなくちゃいけない気がして。お散歩は一回30分以上ほかの犬には目もくれずまっすぐ前を見てすたすた歩くのがいい、ご飯の時間は決めてオーガニック国産で、寝るときはゲージでゆっくりひとりで入って寝る。早起きしてしっかり散歩とブラッシングは怠らず、太らないよう注意して健康的なものだけ、人間の食べ物は決して食べない。みたいな。笑…あーしんど。規律正しく生きてる感と約束守る生き方を正しいとしていた変な私。ゴロゴロしながら今日はいいっか、一日ゴロゴロでいいっかって日もあっていいし、朝からお出かけ、一日中遊びましたって日もね。私優先の日もわんこ優先の日もあっていいんやって。「無理せずできることをする」佐竹さんのスタイルにほっとした日を覚えてる。

佐竹バウくん

そのバウくんが病気になった。血液が作れなくなる病らしく、ほぼ寝たきりに。それでも二階のおしっこ場でないとおしっこしない賢い子。佐竹さんは抱っこして連れていく毎日。テニス肘になり、膝に水たまりへとへと。それでもおしっこ場に行ったら健気にしっこするって・・。私なんかには、なんもできることがないのでゆっくり眠れるクッションを送っては見たけど…考えに考えて、神の手 進学之先生を紹介した。どんなにお世話になったか、どんな先生か、私が進先生をどんなに好きかいっぱい伝えた。佐竹さんは進先生のクリニックに行ってくれた。私の伝えた進先生を信じて行ってくれたこと、とってもとっても嬉しかった。そして。

昨日「今、進先生の所を出たところです。バウはこの数値(血液検査)でよくがんばっているそうです。2週間持てばいいほうらしいです。中略 なんか流石に2週間と言われてこたえました。でも、あと少し 沢山大好き攻撃して見送る構えができました。」とLINEが来た。

辛いのは私じゃないのに、どんどん涙が出てどうしたんやろくらい泣いちまって。でも何もできることはないし。かんたやももじや、一度会ったきりのバウくんのふわふわを思い出して でも私が泣いてもどうにもならん。

ゴールデンウイーク明けの佐竹さんとの飲み会を勝手に全員にキャンセル連絡した私は、勝手なことをしたことを佐竹さんに謝った。佐竹さんは「進先生に、もうあかんって言ってもらって、えー!って悲しくなったけど、いつまで続くんだろうというしんどさから解放されて、しっかりバウと向き合うことができる。でも…毎日泣くんだろな、私。」と言った。

先の見えない介護は、人間にも。家族みんなに起こり得る。また元気に生きてくれるなら、できることは全部したい。でも体も心もボロボロの自分もいる。これ以上どうすればって闇の中の自分を探せなくなる。どうすればいいのかどう考えればいいのか、何が悲しいのか、どうしたいのか、私はどんどんわからなくなっていく。もちろん亡くならない人生も犬生もない。ずっと生きろって思ってない、延命したいわけじゃない、逝くのを待ってるわけじゃない。ただ悲しいだけだ。泣きながら私は何が悲しくて泣いてるんだ?って なんもない。何が?とかじゃない。ただ悲しいだけだ。でも実際そばにいる人はただ悲しいだけじゃない、悲しいだけを超えて現実が重く深く迫ってくる。

今朝はおやつも食べたって!お薬も飲めたって!

バウくん、佐竹さん。悔いの残らん日々を過ごしてください。いっぱい大好き攻撃して、ね‼‼‼‼‼

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