伝心❺

そしてまたここにも一人の婆様がいる。
大金持ちの家のお嬢様として誕生し、お付の子が身の回りのことをしてくれるような何不自由ない生活で「NO!」と言われたことのない婆様だ。
お財布を持ったこともなく、もちろん自分でお金を支払ったこともない。そうそう、執事のじいが支払いをするのよね。
わがままで純粋な子供のままおばあさんになっちゃった彼女は逃亡する。笑
お金に糸目は付けない生活なもんだから、タクシー呼んでいきたいとこ行っちゃう。病院も次々変えてどこも悪くないのに病院大好き入院大好き。人差し指くらいの瓶に入った美容液3万円‥を一晩で使っちゃったり、デパートのブランド店バーバリーで50万円分ほどお洋服買って来ちゃったり、付き添いがビビってしまうほどの豪快なお金の使いっぷりで…。

ある日、近所のクリニックに受診し職員がちょっと目を離したすきに自分でタクシーに乗り込みいなくなった‥私らは大慌て!どこ行ったーーーー!病院やら行きたいって言ってた美容院やらスーパーマーケットやら自宅やらデパートやら一斉捜索が夜まで続いた‥ご家族は「ほっときなさい。もういいから、あの人そういうことするのよ、迷惑よね、ごめんなさいね。出ていけなんて言わないでね、お願いね。」と言われ‥そんなことより命が心配!夜の8時、めいの家の前に一台のタクシーが止まった。‥‥・降りて来たのは逃走した婆様だ。「コラっーーーー‼‼‼‼‼」ご近所に響き渡るくらいの大声で叫んだ。どこに行っていたかと問うと「アサヒビールの見学会やで」と自慢げに言う。「JR吹田駅の前にあるアサヒビールの工場は見学会をしてて出来立てのビールが飲めていろんなお菓子がもらえるし買えるんやで、知ってるか?」って自慢に自慢を重ねた笑顔で言う…もう腹立ちが収まらん‼‼‼持っていたお土産の飴やお菓子一式を取り上げて「何をしてるかわかってる?」と聞いた瞬間 玄関のスロープに寝転んで手足をじたばたさせて泣いてわめいた。「お菓子返して!」…やってさ。もうばかばかしすぎて泣きながら笑った。無事でよかった。

この婆様を自由なまま、この傲慢な純粋なまま生かせてあげようとみんなで決めた。好きに生きろ!ちゃんと見てるから!

Screenshot

「頼みがあんねん。写真館行きたいねん。お嫁さんの恰好笑われるか?ウフフフフ」かん太と。

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