私の記憶 高鍋馨

めいの家を開所して気づいた。わかっていたことだが改めて気づいた。
経営能力がない。計算が出来ない。断れない。‥残念だが私のこと。
何度電卓をたたいても毎回違う結果になる。何度やっても正解がない。
まず頭を打ったのはそこんとこ。
次にお金にならない事ばっかり引き受けてしまう。
時間も手間もかかること、何ならお金までかかることを断ることが出来ない。
こんな小さな施設に、せっかく頼ってきてくれたのに私が断ったらどうするんだろうと思ったらもう断るという選択はない。
残念な私は、どうにかこの苦手な事務作業をしてくれる人はいないかと思うようになった。いくらすっばらしい理念を掲げて自分の入りたいと思える施設を作ったとしても計算に日々追われていては先が遠すぎる。
たまたま行った古巣の特別養護老人ホームで派遣事務員とした働き始めたばかりの高鍋馨を見つけた。この人連れて帰ろーっと!!思った。
派遣に執着したわけでもなく割と簡単に騙されてくれて引き抜いた。
これがまた、京都の女で気が強く電話に出ることが一番多いのに愛想がないとよく言われる。

けど、本人は意地悪な気持ちなど全くないし、思いついたことをペロッと言ってしまうだけで、そっけないが機嫌が悪いわけでもない。
この十年以上の日々を、何でもすぐになくしてしまい忘れてしまう私の大切な記憶として大切なことは全部覚えてくれている。
かおるちゃんの記憶がぶっ飛んだら、パソコンがバグるより私は困る。
最近、かおるちゃんも歳を取って来たので「あっ!!忘れてましたー」なんてこともたまにはあるけど
京都の女は気が強い。少々のことでは折れない。
めいの家で働き始めてから介護ヘルパーの資格を誰にも言わずに取った。
誰にも言わずにですよ、私ならありとあらゆる人に自慢するわ。
介護施設で働いているのだから、事務でも取っといたほうが良いと思ったらしい。
気が強い女は真面目です。
で、今ではグループホームの勤務もしていて、入浴介助や排せつの介助もやっちゃう。
スーパー事務なんです。
すぐに骨を折るので、これから先も骨には気を付けて、そこんとこだけは気を付けてほしいものです。
みなさん、愛想ない電話の受け答えと思っておられるかもしれませんが、高鍋馨は愛想なしが魅力です。表裏ないと思っていただいて「あー今日も高鍋さんやなぁ」と楽しんでいただければ幸いでございます。めっちゃいいやつですから!!

 

前の記事

師匠:岩崎史恵

次の記事

一匹だけ  山本雅矢という狼