十五話 毎日な、一生懸命やっとったらええ。やっさんの教え

愛媛県生まれ四姉妹の二番目。村の中で一番の男前と結婚したことが自慢。「お国のために!」と過酷な仕事も進んでしていたし、辛いと思ったことなんか一回もない。だってお国のためにやれたんじゃけん。と胸を張る。大柄で既製品が着られなかったこともあり自分で縫っていたし、家族のお洋服も縫って、編み物も得意で、和裁、墨絵、日本舞踊など趣味も多彩。何でも楽しくできる才能があり、嫌なことや怒ることは殆どない優しい性格。とってもいいお母さんだから、長男さんは毎週電話で様子を聞かれ、長女さんは毎週おうちに連れて帰られた。とてもとても大切にされていた。とにかく既製品が入らないくらい大柄で膝も悪く立つのがやっとで連れて帰るのも至難の業で、でも娘さんは音を上げず頑張られた。めいから出発するときは職員が手伝って車に乗せるけど、降りる時は娘さん一人で・・車から二人一緒に落っこちたり、家の廊下でダイブしたりしたらしいけど、当の本人はものすごく面白い映画を見たみたいにそのことを笑って話す。何でも楽しんじゃう感じ。少々痛くても「すぐ直るよ」と笑っている。おおらかな人でね。心房細動、狭心症、糖尿病、慢性腎盂炎そして認知症といっぱい大きな病気を抱えていたのに当のやっさんは「もういつ死んだってかまん」「今から死んだってなんも思い残さんけん」と高らかに笑っていた。でも、困ったのは・・とにかく出ても出なくてもしょっちゅうトイレに行きたい。行きたいんだけどひとりで行けない。なんせ大きいので10分に一回ぐらいの感じでトイレに連れてってと言われても介護者の体力が追っつかなくて、話し合うけどなんてったってトイレに行きたいし、おしっこ出ないと不安だし・・でも10分に一回トイレに座ったらそりゃもう出ないでしょうよ。足腰パンパンになって困り果てた職員はやっさんを連れまわして疲れさせる方法に打って出た。散歩、買い物、洗濯もの畳み、おしりふきタオル切り、拭き掃除、お茶碗拭き、もう何でもやってみたけど時間が空いたらすぐにトイレっていう。もう困ってしまって泣きたいくらい。やっさんは、トイレに行きすぎて足に力が入らなくなりお昼を過ぎるともう立てない。でも抱っこして連れてってほしい。わかるんだけど、とにかく重すぎて・・という毎日にほんとに疲れた。でも、それでも、可愛い人でめんどくさがりのくせに人のためにお願いすると断れないし自慢も誇りに思う事も控えめに言う性格の良さ。自分も動けないのに困っている利用者をほっとけないし、かんたを「クロ」と呼び膝にのせて可愛がった。人にも犬にも限りなく優しい。
そして「ちゃんとできんでもええ。一生懸命やっとったらそれでええんよ。」と頭を撫でてくれた。「あんたはがんばっとる。がんばっとるよ」と満面の笑顔で褒めてくれた。やっさんはええおかあちゃんや。

顔を近づけるだけで、くしゃくしゃに笑ったお顔でチュウ♡してくれる楽しい可愛い優しい肝っ玉母さん、やっさんだーいすき!!!

大きな病をいっぱい抱えていたやっさんは、最期は病院で大好きな娘さんや息子さんに看取られて逝った。大好きなお母ちゃんを愛おしむようなお葬儀も胸に染みた。亡くなって5年。今も娘さんからお手紙をいただく。お通夜にお渡しした「やっさん写真集」を見て思い出話をしてくださっていると。ご縁は今も続いている。介護士冥利に尽きる。感謝。

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