私、認知症ですねん。

92歳のばあさまがお仲間に加わった。女子はしょうもない話ですぐ仲良くなる、それはそうなんだけど、人見知りと言うか新しい方に厳しいというか、皆 遠巻きに様子を見るというか‥話しかけてあげたりしないんだなぁ。まぁ、今いる方がそうなのかも、だけど。派閥?仲間意識?なんだろ?そしたら92歳は次々に「握手しましょう」と手を出した。みなさん、恐る恐る手を出し握手した。みんなちょっと笑った。さすが92歳。素晴らしい手法‼‼‼そして「私、認知症ですねん。娘がそう言いますねん。」と言った。周りは皆困ってしまって「そんなことないでしょ」「そんなん言うてはるだけよ」などと変な慰め方をした。「いえ、認知症です。私、認知症ですねん。忘れるしね、変な事も言います。」そして「私、焼き芋好きですねん。お好み焼きとお寿司といやしいから何でも全部食べます。」と皆を笑わせた。人の話は聞かず、自分の言いたいことだけ喋りまくった。変わった人だなぁって思われたってそんなことお構いなし。自分が言いたい事言って聞いてくれる人がいたらそれでいい。美味しいふかし芋が出てきたらそれでもう嬉しい!って拍手する!「はよ死にたいけどなかなか死ねません。はよ死なしてください。」と言いながら「おいも食べたいわぁ。長い事ふかしいも食べさしてもうたことありません。おいも食べたいのに。」と嘆く。ずっと眉間に皴よってる。悔やんだ顔してる。だから、たまに笑うとめちゃくちゃ可愛い‥気がする。口汚く娘の悪口言うもんだから職員皆に叱られてシュンとするかと思いきや‥ガハガハ大笑いして手を叩いている。おおらかと言うか 気にしないというか 自分勝手と言うか 自由人と言うか…周りを何も気にせず言いたい事言って悔やんで、明るく死にたいと叫びながら、今日もお芋を食べている。なんだかほっこり笑っちゃう婆様だ。「私ね、いやしいから何でもおいしいんです。なんぼでも食べられます。残しません。いやしいからね。」と言い、「あの女、どこ行く気やろ。歩いてまっせ」って人の事言うからそんないい方したらダメって言うとね「私、認知症ですねん、わかりませんねん。認知症やしね。」とちょっと寂し気に肩を丸める。皆吹き出してしまう。92歳、駆け引きができる。新しい住人はとてもおもしろい!

何でも挑戦!悔やみながら。笑

前の記事

春って。

次の記事

厨房の魔女たち