グループホームの入所申込書

めいの家は、2階と3階がグループホームで8人ずつ暮らしている。今は女子天下で男性はいない。一番年上は101歳で、一番年下は65歳だ。時々、多い時は毎日、入所申込の電話が鳴る。「今空いていますか?」と聞かれるが大体の場合空いていない。空いていたとしても申し込んで待ってくださっているのでなかなか一番ってわけにはいかない。今、申込みいただいている方17人。多い時は30人近かったこともあって・・でも、めいの家は順番通りには入所していただかない。お部屋が空いた時に一番急いでいて困っているだろうと推測される方から声を掛ける。本人も家族も疲れ果ててしまうまでに・・施設に入所していてもうまく付き合えなかったり、その施設の在り方が合わなかったり、そういう辛さも同様だと思う。      

まず、お電話を頂くと「グループホーム空いてますか?」と聞かれ、次に必ずって言っていい程「いつ頃空きますか?」と聞かれる。この「いつ頃空きますか?」・・は結構きつい質問で、今いる誰かが居なくなることを指す。亡くなるか、入院して帰ってこないか、たまに特養に行ったり、遠くのグループホームに行かれる方はいるけど‥それはものすごく極稀なお話。  「いつ空きますか?」の返事は出来ない。待ってみてもらわないとわからない。そういうとだいたい「そうですよね、わかりませんよね」と言われる。わかっていても聞きたい質問なんだ。お心お察しします・・・。でもここで終わると身も蓋もない話になるって。

何年か前、京都ナンバーの車が止まった。中からものすごく憔悴した小さなご婦人が出てこられ「ここはグループホームさんですか?」と聞かれた。その質問より何より、今にも泣きだしそうなそのご婦人を玄関先で立たせておくことができなかった。あったかいお茶を入れて向かい合って座った。「空いていませんか?」と聞かれたので「空いていません。お急ぎですか?お急ぎならほかのグループホームに声をかけましょうか?空いてるかどうかだけでもわかったら訪ねられますか?」「お母さまですか?今どんな状況かお話しいただいても?・・・」と話しかけていると机に突っ伏して嗚咽が聞こえだした。よっぽどつらい状態なのかと思い、泣き止むのを待った。「大丈夫です。誰もいませんから我慢しないで泣いちゃってください。」と伝え待った。はぁーっと大きなため息をつき夫人は笑った。「嬉しくて・・」とまた泣いた。聞けば・・吹田に一人暮らす母を京都に引き取り一緒に暮らし始めたけど毎日毎日 吹田に帰りたいと泣かれる。施設でもいいから吹田で死にたい、吹田にはお父さんがいるから、と。でもそのうち叫び出し、暴力も。「よっぽど帰りたいんだと思います」と言われ、意を決して吹田の施設を探しに来たそうだ。市役所でリストをもらい、お母さまの家から近い所から見学しようとしたらしい。1件目・・インターホンで満床なんですみません、と言われ出てきてもらえず。2件目・・玄関先で壁に手をつき(片手壁ドンみたいな感じ)「今満床なんで、お話聞いても仕方ないんでねえ。また空いた時にでもね。」と申込書をヒラリと渡されて扉を閉められた・・とか。3件目もう帰ろうかな・・辛いし腹は立つし悔しいし どうにでもなれ!とめいの家に来たそうで。私は施設を探したことはないし、まだ申込書をもらいに行ったことはないけど同業者の冷たさに腹が立った。その後はいっぱい話をしてくださって、京都でもうちょっと頑張ってみるって胸張って帰って行かれた。今も時々電話がある。言いたい事言ったら頑張れるらしい。聞いて欲しいだけの時だってあるよね、いっぱい。わたし、その 聞いて欲しい時に間に合う人になりたいんよ。      また、今入所待ちしてくださっている方が、申込書の入所希望理由欄に

こう書いてくださっていた。誰が対応したのか・・わからないけど辛い思いをさせなかったんだ。よかった!こんなうれしい入所理由はないでしょ!!心に染みます。「いつ空きますか?」の返事は出来ないけど、急いでるなら、辛いなら、困っているなら‥‥なんか話したいことあるだけでもね、いつでも来て欲しい。いつでも声かけてほしい。答え出なくても一緒に悩むことはできるから、なんかいい事思い付くかもしれないし、ね。めいの家を頼りにしてくれただけで、ただただ…嬉しくて。私は明日も元気に仕事できます!!

日本中の介護施設の職員にお願いです!!!私たちの仕事の一番は 話をちゃんと聞くこと、一緒にいること。でしょ?でしょ?    入居者だけじゃない、ここにいる人だけじゃない。どんな時でも誰にでも いつも同じに思いやれる介護士でいましょう。こんな辛い思いして泣く人がいないように・・したいです。

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